2~3歳頃まで(入園期)の情報

1.睡眠

人の睡眠に影響するものに光があります。朝の光は私たち人間の生体リズムをコントロールする時計(生体時計)を1日24時間に調整してくれます。しかし、夜に光を浴びてしまうと睡眠のリズムやホルモンの分泌に影響が出てしまうといわれています。特に体が小さい幼児はスマートフォンなどの携帯機器を見る際、距離が近くなりがちで、同じ画面を見ていても大人に比べ明るさは倍になってしまいます。寝る前に携帯機器を見せることは是非、避けるようにしましょう。また、大人と子どもの必要な睡眠時間は違います。毎日の生活リズム(食事の時間や就寝時間・起床時間など)を整え、子どもの年齢にあわせた睡眠時間を確保する必要があります。また、就寝前の読み聞かせなど、寝ることが楽しくなるような工夫を親子で相談してみてはいかがでしょうか。

2.双子の個性

双子は、例えどんなに似ていたとしても一人一人の人間です。それぞれがかけがえのない「個」です。いろいろなことができるようになってくるこの時期になると、双子も段々と個性が出てきます。もちろん兄弟姉妹ですので似通った部分はあります(一卵性は特に)。しかし、その似通ったところにもよく見ると次第に違いが出てきます。その違いを大切にしてあげてください。そして、例えば双子がお互いに違うことをしたがったり、求めたりしたときはそれを尊重してください。実際は、違うものを欲しがったりしたくせに、「やっぱり同じがよかったあー」と言うこともよくあります。そんなことを繰り返しながら一人一人が個性を伸ばしていくのです。もし、それぞれがそれぞれの挑戦をしたときには、些細なことでもそれを褒めてあげてください。例えうまく行かなかったとしても、それはすばらしいチャレンジです。

3.双子間の絆

双子には、世の中に自分のことを分かってくれる人間が絶対にもう1人いるという安心感があります。そして、この安心感を作っているのが双子の絆です。双子は双子から逃れることはできません。ですから、双子としてのお互いの関係性をしっかりと確立する、双子同士がしっかりと仲良くなることが大切です。お母さんお父さんたちからよく聞かれることに、「うちの子は双子同士でばっかり遊んで、他の子とあまり遊ばないんです。社会性がつくかどうか心配です」というのがあります。確かにお母さんお父さんにとって、双子が双子だけの世界に閉じこもって見えるならば、それは心配なことでしょう。しかし、この時期の双子にとっては、まず双子同士がしっかりとした絆を築くことが大切です。ですから、2人で遊んでいるときなどに「〇〇ちゃん、△△ちゃん。双子でよかったね―」とか「2人で仲良く遊べていいね―」と2人で仲良くしていることに対して肯定的な声掛けをしてあげましょう。そして、そのことを一緒に幸せに感じてください。

4.子どもの安全

平成28(2016)年人口動態調査によると、わが国の0歳~14歳の子どもの「不慮の事故死」は、すべての死因の中で上位を占めています。10年前と比較すると事故死数は減少しているものの、事故による死因は高い順位にあり続けています。杏林大学・多摩多胎ネットが日本多胎支援協会の協力を得て行った多胎家庭への調査よると、多胎家庭は事故が起こりやすい可能性があることがわかりました。双子・三つ子がいる家庭で起こりやすい事故には共通する特徴があるようです。「片方の子の面倒を見ている時、もう1人の子が危ない」「2人が別々の方向に走り出す」「2人で協力していたずらする」「一緒に遊んでいるからと安心して目を離した時にけがをする」などがあります。家庭の中に発達段階が同じ子どもが複数いることで、また大人の目が十分行き届きにくい中で、事故を防ぐためにできるのはどのようなことでしょうか。家庭の中で特に居間の環境を整える、安全に配慮した商品「セーフティーグッズ」を選ぶ、ドアストッパーなどの事故防止グッズを活用する、外に飛び出せない公園を選ぶ-など、安全な環境への配慮が望まれます。

5.発達

運動機能が伸び、活動的になって行動範囲が広がり、手先も上手に使って遊びを楽しむようになります。言葉も増え、社会性が育ち、理解できることも増え、自我を拡大させる時期で、身のまわりのことも自分でしたがるようになります。言葉の発達では、一般的に多胎児は単胎児に比較してゆっくりですが、長期的にみると、差は無くなっていきます。多胎児同士の差では、卵性の影響を受けます。性差では、単胎児と同じく男子は遅れがちになります。単胎児との発達差は、多胎児同士で特有のコミュニケーションが取れることが原因との説もあります。多胎児を連れての外出は困難ですが、多胎児のサークルなどで他の子と触れ合う機会を増やしていきましょう。

6.行動

いつも一緒にいる多胎児同士の関わり合いは、ますます活発になり、互いに関心を持ち、同じものを欲しがり、同じことをしたがり、ケンカも多く、激しくなります。自我の発達である第一次反抗期のイヤイヤ期はこの頃に表れますが、1人がイヤイヤをすると、他方の子もつられて真似をすることもあります。
未熟ながらも自分で何でもしたいこの時期の気持ちは、排泄や食事、衣類の着脱など、しつけ面に活用します。また、子どもたちの性格や能力、力関係の違いもはっきりしてきて、親が子どもたちへの比較、平等な対応に戸惑いを覚えることが多くなります。半面、互いに真似をし、競争し、仲良く遊び、しゃべり、笑いあい、世話をしあう、協力して思いがけないことをする、寄り添って眠る姿など、この時期は特に微笑ましく、可愛く、まさしく多胎育児の醍醐味を味わうことができます。

7.入園の選択

多胎家庭では育児休暇が終わる頃までに、一時預かり保育やファミリーサポートやホームスタート、子育てひろばや支援センターを利用する頻度も徐々に増えてくると思われます。そのことは、子どもたちの行動範囲が拡大することで親の感じる負担感(子ども達同士の関係性、けんかや比較からくる困難さが増えるなど)が変化することからもうかがえます。そこで、あの手この手を使って認定こども園、幼稚園、保育園等への入園準備を始めますね。その時、子育て支援センターは地域の保育施設について非常に詳しく頼りになると思いますので相談してみてください。また、多胎育児の先輩ママたちからの情報も参考になるでしょう。こうして園の見学や入園のための活動から、子どもたちが安心して過ごせる環境の整った園をパパとママで選択していきます(複数ある場合は希望順位を決めておきます)。多胎児の場合、子どもたちが病気の時の対応や園のルールも重要になると考えます。また、認定こども園では、ママがフルタイムかパートかなどの働き方で保育時間が決められているため、多胎児の育児休業中、上の子は1号認定の枠でしか利用できないことになります。

8.外出

一人で歩けるようになり嬉しい反面、双子は自由な方向へそれぞれが動くため、目が離せなくなりますね。毎日公園に行く必要はありませんので、自分自身が余裕を持って出かけることができる場所から外出してみましょう。まずは週末など時間に余裕のある日に練習してみても良いかもしれません。準備段階から想定して近所へ散歩してみて、新しく一人で行かなければならない場所へは夫婦で一緒にシミュレーションするのも良いですね。行きたい場所への環境的な問題(段差、階段、エレベーターなど)と、運搬的な問題(狭い場所を通るのにこのサイズのベビーカーでは大丈夫かどうかなど)を事前に確認すると、本当に行かなければならない際の気持ちが随分と違ってくると思います。
公共交通機関を利用する際には、人員的な問題(物理的・心理的に手は足りるのか、その通路で自分以外の一般の人は通れるのかなど)も一度考えてみると良いでしょう。行動パターンは家庭ごとに多様です。公共交通機関には、子育てをしている人も、子育てをしていない人も安心安全に乗ることが前提にあります。自分が育児中に行動するパターン(ツインベビーカーなのか、抱っこ紐+ベビーカーなのか、車なのか、人手があるのかないのか、人の移動が多い時間なのかなど)を細かく考え、わからない部分は実際に見たり、問い合わせたりしてから、本当に自分が外出に必要な運搬に関わる物を買いそろえる方が良いかもしれません。
幼稚園や保育園にて開催されている園庭開放の日に出かけたり、児童館や子育て支援センターなど、地域で子育てを応援している場所も探したりしてみましょう。また、多胎育児サークルで同じ多胎育児をしているご家族とお話ししてみるのも良いかと思います。お住いの区市町村の子育て支援課などで近隣の多胎育児サークルの開催状況を問い合わせてみましょう。行政が主催している多胎育児サークルはインターネットに載っていない場合もありますので、一度聞いてみるといいかもしれません。また、自主サークルでは地域を超えて参加が可能な場合が多くあります。
双子・三つ子を連れての外出はどの家庭でも一度は悩む問題です。いつかは安全に公園で遊べる日が来ますから焦る必要はありません。危険を冒してまで外出する必要はなく、自分の気持ちを大事にしてください。ちなみに我が家の娘たちが2、3歳児の頃(一卵性女児双子)、出かけたい(子どもたち)けど出かけたくない(私)日は自宅でお菓子やピザ作りをしていました。高温で焼くので具材も自由に手づかみで作れる上、本人たちも自分の作ったピザに満足しながら楽しい時間を過ごしていました。

9.上の子

一般的に、下の子(第2子以降)が生まれると、「上の子を優先してあげてください」と言われますが、後から生まれたのが双子の場合は2倍手が取られるため、上の子を優先する状況はつくりづらいものです。ですから、上の子が興味を示すことには、存分に付き合ってあげたい気持ちになります。それでも、双子が一緒にいると手が取られてしまい、結局、上の子に付き合いきれず、本人もストレスがたまるようでした。だからといって、双子がいて寂しそうかといえばそうでもなく、きょうだい(弟や妹)が2人もできてうれしそうでした。だから、いっそのこと、双子育児の小さな助っ人として、年齢に応じたお手伝いミッションに参加してもらい、「ありがとう」を伝えることで、役立ったという誇らしげな笑顔を見ることができました。

10.トイレトレーニング(オムツはずれ)

トイレトレーニング(オムツはずれ)は育児中の大きな関心事の一つですね。特に多胎家庭に伝えたいポイントの1点目は、「余裕があるときに、トイレを試してみましょう」ということです。オムツはずれは、「排泄はトイレでするものだ」と知ることから始まります。自分で「余裕があるな」と思えたり、「やってみようかな」と思えたりしたときに、トイレに座らせてみましょう。うまくできたときには、うんと褒めてあげてくださいね。できなかったら、適当に切り上げて、また次の“余裕のある機会”に試してみましょう。親に余裕がないときには、つい子どもを急かしたり、しかったりしてしまいがちです。そんなときにトイレでの排泄を促しても、親子双方にとってトイレがつらい場所になり、悪循環に陥ってしまいます。「双子(三つ子)なんだから、余裕なんてまったくありません!」という方もご心配なく。「トイレトレーニングをしないまま入園したけれど、集団生活のなかで自然と覚えてきた」という家庭も少なくありません。オムツを卒業する時期は必ずきます。焦ったり落ち込んだりする必要は全くありません。
2点目は、「1人ずつ」ということです。トイレトレーニングを2人(または3人)同時に始めると、トイレやオマルを取り合ったり、1人をさせている間に別の子が漏らしてしまったりと収拾がつかず、親のほうが泣きたくなってしまいます。オムツはずれの時期は、心身の成長段階に大きく関係します。例え一卵性の双子・三つ子であっても、成長が全く同じというわけではありません。トイレトレーニングを開始するのならば、どちらか1人から始めてみましょう。子どもたちにはそれぞれの成長があります。オムツはずれの時期がズレることも珍しくありません。むしろその時期がズレた方が、1人ずつに対応できるので親の負担が軽くなると考えて、1人ひとりのオムツはずれの時期がくるのを待ちましょう。でも、1人にトレーニングしていると、もう1人も参入してくるというのも多胎家庭あるあるですね。そんなときには、子どもの「してみたい」という気持ちを尊重し、もう1人にもさせてみましょう。親の予想に反して、そちらの子のほうが先にうまくいくこともあるでしょう。1人がうまくいけば、次の子も真似をして完了が早まることが期待できます。なお、1人をトイレに座らせているときには、もう1人(三つ子ならばもう2人)は目の届くところに置いたり、安全な場所に居させたりするように気をつけましょう。
3点目は「完了までオムツを使いませんか」です。1人に対応していて、もう1人の尿意や便意に対応できない場面が多々あるのが多胎家庭です。トイレトレーニングのための「トレーニングパンツ」という、魅力的な響きの育児グッズがありますね。ですが、特に布製のトレーニングパンツはよく漏れます。「濡れると気持ちが悪い」と思わせるためのものですから当然ですね。でもそうなると、衣類やラグなどの洗濯量や床などの拭き掃除の回数が増えて、特に多胎家庭での負担はとても大きくなるので、お勧めしません。紙製のトレーニングパンツは、紙オムツの約1・5倍の価格のため、経済的な負担が増えることになります。そこで、トイレトレーニング中でも基本的にオムツをはかせることをお勧めします。トイレできちんと排泄できるようになってからオムツを卒業し、いきなりの“パンツデビュー”はいかがでしょう。そのほうが、親子共に負担が少なく、親が気持ちに余裕をもてるように思います。そろそろオムツを卒業かなという時期に、“憧れのお兄ちゃん(お姉ちゃん)パンツ”を一緒に買いに行くと、子どもたちのオムツ卒業への意欲にもつながります。