ふたごの健康課題は「家庭単位で」考えることも重要

例えば、10人の単胎児と10人のふたごがいたとします(母親はそれぞれ10人と5人になります)。ある健康課題(例えば疾患や障がい)の発生頻度がいずれにおいても10人中2人だったとした場合、「児(子ども)当たり」の頻度は単胎児・ふたごのいずれにおいても0.2(2/10)となります。しかし、「母親当たり」でみた発生頻度は単胎児とふたごで異なる可能性があります。単胎児に関していえば、健康課題のある児を出産する割合は、「母親当たり」でも「児当たり」の場合と同じで、10人中2人つまり0.2です。しかし、ふたごの場合は健康課題のあるふたごが同じペアの2人(つまり、ペアの両児ともが同じ健康課題を有する1組)なのか、異なるペアからの2人なのか(つまり「健康課題を有する児とそうでない児の組」が2組)によって状況が異なります。前者(「一致(いっち)」といいます)の場合、5人の母親のうち健康課題のある児(2人)を出産した母親は1人です。つまり、「母親当たり」でみた場合の発生頻度は5人中1人(0.2)となります。一方、後者(「不一致(ふいっち)」といいます)の場合は、5人の母親のうち健康課題のある児を出産した母親は2人です。つまり、「母親当たり」でみた場合の発生頻度は5人中2人(0.4)となります。要するに、健康課題のあるふたごが「一致例」であるか「不一致例」であるかによって、その児を出産した母親の頻度が変わるということです。ここでは「母親当たり」として例に挙げましたが、これは「家庭当たり」と考えても同じことです。この場合は、「少なくとも1児に健康課題のあるふたごを育児する家庭」と考えればよいわけです。

以上の議論は「ふたごの母親」あるいは「ふたご家庭」を中心に考えても同じです。この場合は、例えば、単胎家庭10家庭(10児)とふたご家庭10家庭(20児)から考えていけばよいわけです。20%の児に健康課題があったとすれば、ふたごでは4児になります。この4児が2組のペア(一致2組)、3組のペア(一致1組、不一致2組)、4組のペア(不一致4組)に由来する可能性があるということです。そして、少なくとも1児に健康課題のあるふたご家庭の頻度はそれぞれ10家庭中に2家庭(20%)、3家庭(30%)、4家庭(40%)となります。

実際の場面では、一致例と不一致例が混在します。当然、不一致例が多ければ「少なくとも1児が健康課題のあるふたご(ペア)を出産した母親(家庭)」の頻度が高くなり、一致例が多ければその頻度は低くなります。

一般にふたごの遺伝研究では組一致率という考え方があります。ある健康課題を1組のふたご両児が有する場合に一致、1組のふたごの1児だけが有する場合を不一致とします。組一致率は、一致組数を一致・不一致組数の総数で割って求めます。例えば、10組のペア(ふたご20児)がいて、このうち5児に健康課題があったとします。一致組が1組(健康課題を有する児が2人)、不一致組が3組(健康課題を有する児が3人)であれば、組一致率は4組中1組なので1/4=25%となります。やや難しいですが、理論的には一致率をX(0<=X<=1)とすれば「母親当たり」の頻度は「児当たり」の頻度の2/(1+X)倍になります。すべてが一致組の場合(X=1)に限って、「母親当たり」の頻度が「児当たり」の頻度と等しくなります。一致率が小さくなる(0に近づく)につれて、「母親当たり」の頻度が「児当たり」の頻度の2倍に近づきます。これは単純な数学的な事実です。

簡単な例を挙げると、「死産」だと過去長期にわたり組一致率がおよそ0.7とかなり高めです。この場合「母親当たり」の頻度が「児当たり」の頻度のおよそ1.2倍程度になります。新生児死亡、乳児死亡の主因である先天異常に関していえば、組一致率がおよそ0.2程度になります(一般に思われるほど高い一致率ではないことに注意)ので、「母親当たり」の頻度が「児当たり」の頻度のおよそ1.7倍程度になります。つまり、先天異常そのものの発生頻度に単胎児とふたごで大差がないとしても、「母親当たり」あるいは「家庭当たり」の発生頻度は相当な開きがあるということになります。これは、少なくとも1児(1児ないし2児)に先天異常のあるふたごを養育する家庭は予想以上に多いということを意味します。また、不妊治療の場合、主として産まれるふたごは二卵性です。この場合、不一致例はさらに高くなると予想できます(一般に、一致率は一卵性の方が二卵性よりも高くなる傾向にあります)。つまり、「家庭当たり」の先天異常の発生頻度は増加することになります。三つ子の場合は、三つ子そのもののリスクに加えて、さらに不一致例が増加するので「少なくとも1児に先天異常がある」家庭の数は大きく増加すると予想できます。以上の考え方は、小児期の各種の健康課題などにも応用できます(詳細はここでは省略します)。

母子保健の分野ではふたご(あるいは一般に多胎家庭)に特化した統計指標は特に検討されていないので、以上のような議論はこれまでになされていません。単胎児と多胎児の間で出産リスク、疾患リスクの差が縮まることは非常に好ましいことですが、一致率の問題を考慮すると今後は上記のようなテーマでも検討する必要があるでしょう。多胎家庭の育児支援を考える場合には「児当たり」の頻度よりも「家庭当たり」の頻度が重要になることも多いはずです。このような側面を頭の片隅に置いてもよいでしょう。

なお、今回述べたのはあくまでも理論的な話です。両児とも健康課題のある場合(一致)と1児のみの場合(不一致)でふたご家庭の育児負担がどのように異なるかは別の問題であり、その状況も様々です。実際に支援を行う際にこの種の事例的な側面での議論を行う必要があります。

 

参考文献:Ooki S. Concordance rates of birth defects after assisted reproductive technology among 17 258 Japanese twin pregnancies: a nationwide survey, 2004-2009. Journal of Epidemiology. 23(1): 63-69, 2013.