乳幼児期の情報(最初の1年)

1.授乳

双子・三つ子の授乳は「同時授乳」がおすすめです。退院して、家庭での育児がスタートすると3時間おきの授乳が必要となってきます。一人ずつを授乳すると、双子なら16回、三つ子なら24回の授乳が必要です。お母さんは、いつ寝るのでしょうか、食事をする時間は取れるのでしょうか。そこで考えられたのが、同じ時間に授乳する方法です。同時授乳すると、双子・三つ子の生活リズムが同じようになってきて、育児しやすくなります。そして、お母さんの疲労軽減、睡眠確保、不安感の軽減、ひいては虐待予防にも大いに役立ちます。
同時授乳方法の実際は、日本多胎支援協会発行のふたごポケットブック「ふたごの授乳・同時授乳」をご覧ください。

2.睡眠

生まれたばかりの赤ちゃんは昼夜の区別はありません。1~2時間の覚醒と3~4時間の睡眠を繰り返します。生後3~4カ月頃から徐々に昼夜の区別がつき始め、生後6カ月頃になると昼夜の区別ができ、睡眠のリズムが定着していくと言われています。しかし、双子・三つ子の子どもたちみんなの睡眠・覚醒のリズムがそろい始めるのは、生後8カ月以降にならないとなかなか難しいようです。子どもの睡眠・覚醒リズムが整うまでは、お母さんは睡眠不足に悩まされます。「子どもが寝たら〇〇しよう」と考えずに、「子どもが寝たら、親も寝る、起きたら〇〇する」など気持ちを切り替えて、自分の睡眠時間の確保を優先した生活をしてみてはいかがでしょうか。

3.日常ルーティン

1歳前後の双子育ての日常は、試行錯誤の連続です。離乳食が普通食に、昼寝も2回から1回になり、ハイハイからつかまり立ち、そして歩きだすなど、発育発達も大きく変化する時期の赤ちゃんが複数いるのです。この子どもたちとの日常をどう回していったらいいのか。エンドレスの育児にママの心身の疲労がピークになる時期でもあります。
でも、そういう時こそ、日常のルーティンを大切にしてみましょう。ご飯の時間、もしくは就寝の時間のスタートを意識して決め、それに向けて子どもたちや家族全体の時間の組み方を調整していくのです。子どもの欲求のみに流されず、親がイニシアチブをとってその時間を守るようにしていきます。同じ約束の繰り返しは、子どもにとっては予測できる安心した毎日を保証することでもあり、それがやがて社会への信頼につながります。また親自身も、小さな成功を積み重ねることができれば、気持ちをリフレッシュすることができるのです。

4.発育・発達

多胎児は単胎児に比べて体重が少なく生まれることが多いため、身体発育について心配される家庭がよくあります。在胎週数や出生体重によって違いはありますが、多胎児は乳児期の発育が目覚ましいので1歳以降に単胎児に近づきます。発育が順調かどうかの目安をみるのに、一般的には母子健康手帳に記載されている厚生労働省の乳幼児身体発育曲線を使用します。多胎児の場合は在胎週数が短いことが多いですが、その場合は予定日を誕生日として(修正月齢と言います)評価します。
「双子の身体発育パーセンタイル曲線」をご存じでしょうか。石川県立看護大学の大木秀一教授が全国の双子の母親の報告を基に作成したものです。ぜひご参照ください。測定値が曲線に沿っていれば、子どもなりに順調な発育であるとみなします。曲線が横ばいになったり、凸凹があったりする場合などは、かかりつけ医や保健センターの医師、保健師などにご相談ください。
運動発達については、大木教授の調査によると「首のすわり・ひとりすわり」は、双子の場合と厚生労働省調査値とほとんど変わりはありませんが、「寝返り・ハイハイ・つかまり立ち・ひとり歩き」は、双子の場合は1~2カ月程度ゆっくりとなっています。双子ペア同士の身体発育と発達の差もあります。その差は、一卵性が最も小さく、次が二卵性の同性で、異性の二卵性が最も大きくなっています。2人の運動発達の差は、1カ月以内が多くなります。二卵性は1~2カ月は普通にみられます。ひとり歩きなどでは、2~3カ月の差は稀ではありません。そして、2人の差は固定のものではなく、入れ替わることもあります。差は2人の個性とみなします。

5.愛着形成

愛着形成と聞くと、「赤ちゃんが泣いたらしっかり抱きしめましょう」とか「授乳の時は抱いてアイコンタクトを取って飲ませましょう」など言われます。確かにそのようにできればその方がいいのでしょうが、一度に複数の赤ちゃんを育てる多胎児の場合は、そのようにするとママは寝る時間はほとんどなくなります。無理はせずに、家族や他の大人にも助けてもらいながら、まずはママの体調を整えることが大切です。少しでも寝る時間を確保しましょう。赤ちゃんを頻繁には抱けなくても、抱けるときに抱いて、抱けない時は声をかけてあげましょう。また、家族や他の大人に赤ちゃんの頃から接してもらうことも愛着形成にはとても大切なことです。たくさんの人に見守られながら育つことが大人を信頼することにつながると思います。焦らずに、ゆっくり子どもたちを育てていきましょう。

6.個性

顔がそっくりな一卵性の双子の場合、性格もそっくりなのかな?と思われがちですが、母親に尋ねてみると、「違う」という答えがほとんどです。一卵性双生児でも生まれたときのそれぞれの状態(体重の違いや授乳の飲み方など)や、生まれてからの育ちが全く同じではないと思います。また、多胎児は育っていく過程でお互いに刺激を受け合いますので、例えばどちらかは積極的な性格で、もう1人は慎重な性格というように、違った個性を持つことになることも多いようです。どちらにしてもその個性の違いがその子らしさです。多胎児は周りから比べられることも多いと思いますが、比べることなく、それぞれの個性の違いを長所として育てていきましょう。

7.離乳食

離乳食の開始時期は、5カ月から8カ月の範囲にあり、6カ月が約4割と最も多く、次いで5カ月でした。完了時期は、12カ月から2歳の範囲にあり、1歳6カ月が約4割でした。個々の発育状況に差がある場合は、当初、双子・三つ子を別々に開始している家庭が約1割ありましたが、その後は減少し、ほとんどが同時に与えています。離乳食が1日1回食から2回食、3回食と進んでいく中で、子どもたちの生活リズムを合わせることが、親の負担感軽減や効率にもつながっていきます。
離乳食を与える時の子どもたちは、食卓付きのベビー椅子などに個々に並んで座らせ、ベビーエプロンをつけて、それぞれの食器とスプーンを用意して開始します。こぼれたり、汚したりすることを考えて椅子の下には新聞紙やビニールシートを敷いておくという家庭もあります。食器類について、子どもたちそれぞれに食器・スプーンを準備して使用している母親は、1回食では約5割、完了食の時期には約7割ですが、「感染予防や衛生面」「量や好みを知るため」にも、子どもたち個々に食器やスプーンを使用しましょう。誰のものか区別がつくように色分けなど目印をつけておくと良いでしょう。
離乳食は手作りが好ましいと思われますが、多胎育児の中で離乳食に対する負担感が少しでも軽減するのであれば、1回分ずつ冷凍保存した手作りのものやベビーフードを上手に使っていくのも一つの方法となります。食品は、つぶしがゆから開始し、なめらかにすりつぶした野菜、豆腐、白身魚など少しずついろいろな味を体験できるように進めていきましょう。
双子・三つ子の母親たちからは、離乳食を与える時に気を付けていたこととして、「栄養バランス」「食事のリズム」そして、「一緒に楽しく食べること」があげられます。また、子どもたちの食事場面では、「1人が食べている姿を見て、もう1人も食べなきゃという様子が見られる」「子どもたち同士の食べる意欲が高まる」など良い影響も見られますが、「1人が遊び始めると、もう1人も遊ぶので片付けは大変」など、良いことも悪いことも「お互いに真似をする」とのことです。また、「遊び食べがひどくてイライラする」「作ったものをぐちゃぐちゃにされて辛い」や「なかなか食べてくれない」などが、双子・三つ子育児の疲労の要因にもなっているようですが、「おいしい、おいしいと言って食べてくれる」や、「食べる量が増えて成長がみえる」などの「嬉しかった」ことも多くあります。
子どもたちの体重、食への興味、咀嚼力、食べる量やスピード、好き嫌いなどに差が出ることも、離乳食を進めていく上で多胎育児家庭の大きな悩みとなります。しかし、双子・三つ子といっても、個性があり、個人差があるのは当然です。そう考えれば、それぞれへの対応法が見えてくるでしょう。1日3回の食事のリズムを大切に、生活リズムを整えていけるよう、子どもたちの食欲や成長・発達の状況に応じて調整しながら進めていきましょう。
参考文献 佐藤喜美子他「ふたごにおける離乳の実態調査」(杏林大学多摩多胎ネット2011年)、厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」(2019年改訂版)

8.予防接種

予防接種は、重篤な状態を引き起こす感染症に対する免疫を赤ちゃん自身が作るためのものです。予防接種のできる時期ですが、推奨されている月齢・年齢があります。早産の場合はどのように考えたらよいでしょうか。予防接種については、早産であっても実際の誕生日の月齢に合わせて予防接種ができます。発達などは出産予定日に換算した修正月齢で見守りますが、予防接種は修正月齢ではなく、実年齢で行うことができます。予防接種のスケジュールは、予防接種の種類によって接種時期と接種回数が決まっています。基本的には小児科の先生と相談してください。予防接種は、数種類の同時接種も可能です。

9.沐浴・入浴

沐浴・入浴は子どもたちの体をきれいにするために必要なことですが、自宅で双子・三つ子の沐浴・入浴は家族にとって体力的に負担感が大きいものです。一般的に退院後すぐは、感染予防のために専用のベビーバスを使用し沐浴を行いますが、1カ月健診後は家族と同じお風呂の使用もよいとされています。また、体をきれいにする方法は、沐浴・入浴以外にも、タオルで体を拭くことやおむつ交換時にお尻をぬるま湯で洗うなど部分的にできる方法もあります。専用ベビーバスはおふろ場以外に台所や洗面所に設置することもできます。沐浴・入浴の仕方も「一度に続けて入れる」や「別々に入れる」など、子どもの体調や機嫌、親の体調や協力者の有無に合わせてやればいいでしょう。しんどい時は、体を拭くだけで済ますなど、子どもにとって安全で、親にとって楽な方法を工夫し行うことが大切です。