日本多胎支援協会は10月16日、大阪府吹田市の大阪大学吹田キャンパスで第12回全国フォーラムを開催しました。「地域での多胎家庭支援事業を拡充しよう~明日から始める多胎支援」をテーマに、大阪府内の3事例から支援の在り方を考えました。
フォーラムは大阪大学大学院医学系研究科附属ツインリサーチセンター、同研究科保健学専攻との共催で、公益財団法人SBI子ども希望財団の助成で実施しました。会場に55人、オンラインで全国各地から165人の参加がありました。
冒頭、厚生労働省虐待防止対策推進室の担当者が「こども施策の動向」についてオンラインで説明。児童福祉法の改正により、市町村は妊産婦や子育て世帯などに一体的に相談支援を行う「こども家庭センター」設置に努めるようになることや、来年4月から子育て支援や子どもの虐待に関する施策は新設の「こども家庭庁」が担うことなどを伝えました。
実践報告では、高槻市が昨年度から国の多胎妊産婦サポーター等事業を活用し、「産前産後ママサポート事業」の利用期間・回数を2倍に広げたことを紹介。同時に、対象者全てに案内文を送付し、電話連絡も試みたところ、利用実績が大きく伸びたそうで、子ども保健課の担当保健師は「それまでは情報提供が不十分だった。折を見て個々に一歩踏み込んで情報を届けることが大事だと気づいた」と話しました。
茨木市は子育て支援総合センターで週1回実施している多胎家庭支援の拠点「ぴっぴグループ」の活動に触れました。開設時間内は無理なくいつ来ていつ帰ってもよいようにし、駐車場までスタッフが迎えに行くこともしているといい、「ママたちがリラックスできる場所になるよう、ゆるい感じでやっている」と話しました。今後は先輩多胎児ママとの交流なども検討しているそうです。
豊中市の多胎サークル「ふたごさんあつまれ」は、多胎児の親が2011年に立ち上げ、「当事者としてできることをしていく」との思いで活動しているとのこと。月2回交流会を開いているほか、多胎プレパパママ教室も開催。助産師や看護師らによる講座と先輩ファミリーとの交流会があり、案内チラシは市の担当課が多胎家庭に郵送してくれるとのこと。「行政と協力できる関係が大事」とアドバイスしました。
これらの実践事例を踏まえ、日本多胎支援協会理事で「おおさか多胎ネット」代表の落合世津子・大阪大学大学院医学系研究科附属ツインリサーチセンター招聘教授が講演。多胎妊産婦支援の事業を拡充するために必要なこととして、多胎妊娠・育児の基礎知識を知る▽育児経験者の体験談から学ぶ▽既存の事業を見直し、拡充する-などを提言しました。また「多胎サークルは、ハイリスク集団でありピアサポート集団である」とし、行政支援の重要性を訴えました。
会場の参加者からは「行政の情報提供が当事者とかみ合っていない現状をどうしたらいいのか」「サークルがどうすれば行政とうまく連携できるのか」といった質問が出ました。
フォーラム終了後には、おおさか多胎ネットの企画で「マスク交流会」を開催し、会場の参加者たちがそれぞれ多胎との関わりや支援への思いを披露し合いました。
次回の全国フォーラムは来年秋に香川県高松市で開催する予定です。