双生児の卵性が誤って告げられていることは予想以上に多いのですが、国内ではこの問題についてはほとんど注意が払われていませんでした。今回、育児支援活動の一環として実施してきたインターネット上での卵性診断(卵性診断用質問紙を用いた卵性診断)の集計結果がまとまりましたので、その結果を簡単にご報告します。
分析対象は9歳以下の同性双生児の母親408人です。
1.一卵性双生児のおよそ30%は主として産科医により二卵性双生児と告げられている。
2.一方、一卵性双生児と誤って告げられる二卵性双生児の割合は10%程度と低かった。
3.告げられた卵性の誤りは、不妊治療妊娠の方が自然妊娠よりもかなり少なかった(例えば、二卵性を誤って一卵性と告げているケースは不妊治療妊娠では1件もありませんでした)。
4.二卵性双生児と誤って告げられた一卵性双生児の割合(30%)は、胎盤を二つ有する一卵性双生児の割合と類似した。
5.母親に告げられた卵性と胎盤の数は強い関連を示した(胎盤が一つの場合一卵性と告げられ、胎盤が二つの場合に二卵性で告げられるケースが非常に多かった)。
以上の結果は20年ほど前に報告した内容とほぼ変わりがありませんでした。
3.の妊娠の種類別の傾向は今回新たに分析した項目です。
なお、今回の調査対象(回答者)は、自然妊娠の一卵性双生児の母親に偏っていました。
これは、不妊治療の場合には、移植した胚の数などを基に、(膜性にとらわれずに)より正しい卵性を伝えられやすいためだと思われます。また、母親としても明らかに似ていないと判断した場合には、(二卵性と考えて)卵性診断に対する関心が薄く卵性診断を希望しないためだと思われます。
今回の結果は、あくまでも母親の回答だけに基づきます。従って、医師に告げられた卵性についての解釈に誤解があるかもしれません。また、質問紙による卵性診断の結果自体にも判定の誤りが一定の割合で起こります(今回は1割程度を判定保留とし、誤判定がおよそ2%程度になるような判定基準にしました。)。以上を勘案しても、告げられた卵性の誤りは相当の頻度で生じており、多胎育児支援を考える上でも重要な課題点と言えます。
インターネット上での卵性診断を希望した理由には、その簡便さとともに、「自分の子どものことなのだから正しく、きちんと知っておきたい」と言う回答が多く選ばれました。産科医療に関わる専門職が多胎に関する卵性と膜性を正しく理解し、両者の違いを知ることが強く推奨されます。多胎育児支援に関わる組織を通じて知識を普及していくことも一つの有効な方法だと思われます。
今回の分析についての詳しい内容は、下記に示した文献をご覧ください。また、正しい卵性を知ることの意義などについては、JAMBAのホームページにある様々な資料(https://jamba.or.jp/data2/)にも書いてあります。
インターネット上での卵性診断用質問紙票の作成とデータの入力に関してはJAMBAの田口章子理事が全面的に協力してくださいました。お礼申しあげます。
産科医療機関で告げられる双生児の卵性は必ずしも正しいとは限らない (PDF)