簡便な質問紙による小児期双生児の卵性診断(概要)

以下は、大木秀一教授(石川県立看護大学 健康科学講座)による卵性診断の概要です。

卵性の判定方法

卵性診断質問紙票(前の画面)に回答してください。質問項目全部に印を必ず1つだけつけてください。およそ95%以上の正しさで卵性を判定できます。なお、全体の約10%は卵性の判定を保留しています。

概要

双生児の一卵性と二卵性を鑑別することを卵性診断と呼び、種々の理由により卵性診断が必要となる事があります。
具体的には

(1)遺伝学の研究上の理由(一卵性ペアと二卵性ペアの似ている程度を比較します)
(2)医療上の理由(輸血、移植、遺伝性の疾患で一児が発症した場合などです)
(3)発育評価(児の身体発育、類似度の推移などは卵性の影響を強く受けます)
(4)養育者からの要請

などです。
異性のペアは二卵性ですから卵性診断は通常同性のペアに対して行われます。

この中で、養育者の希望として、「たびたび聞かれるので知っておきたい」とともに多いのが、妊娠期や出産時に告げられた卵性に対する疑問です。産科において膜性(1絨毛膜と2絨毛膜の違いで、胎盤の数とほぼ同じです)をもとに医師から卵性を告げられる場合があります。しかし、胎盤の数と卵性は違いますし、この違いが正しく伝わらないこともあります。よくある間違えは、『胎盤が二つあるから二卵性』であると言うものです。実際には、胎盤が二つに見えても一卵性の場合がかなり含まれています(一卵性全体の25%程度)。

小児期双生児の身体発育・運動発達の類似度(似ている程度)は卵性の影響を強く受けるため、誤った情報は時に大きな誤解を生むことになります。こうした養育上の問題からも客観的で正しく卵性を診断しうる情報を提供することが必要です。

より確実な診断が必要な場合には、遺伝子DNAを利用して診断する方法が最も精度が高いものです。しかし、かなり高価ですし、採血などで児に対する負担があります。また、養育者は一般に児の卵性にある程度の関心を示しても採血までは望まない場合が多いと思われます。この様な場合には遺伝子DNAによる卵性診断が一番確実である事を説明しておけば、より簡便で負担の少ない卵性診断法でも十分に利用可能だと思われます。

以上のような理由で私どもは長年にわたり簡便で正確さの高い卵性診断用質問紙票を開発し、実用してきました。この診断方法は、学術的にも一定の評価を得たものです。

文献

大木秀一:簡便な質問紙による小児期双生児の卵性診断(母性衛生・第42巻4号、P566-572, 2001)