JAMBAが国際多胎組織協議会(ICOMBO)の組織会員であることは何度かご報告したとおりです。次回から、海外での多胎支援活動や多胎支援組織を順次紹介したいと思います。今回は、まずICOMBOがどのような目的でどのような活動をしている組織なのかをICOMBOのWeb情報(https://icombo.org/)を基にご紹介します。
ICOMBOは様々な国の全国的な多胎支援組織を結びつける組織です。ICOMBOのミッション(使命)は「多胎」のユニークなニーズについて世間に関心を高めてもらうことです。多胎特有のニーズは狭い意味での多胎育児に限りません。それは、多胎の妊娠から始まって出産、小児期・成人期、そして多胎の家族も含めて健康、教育、福祉を含む幅広い内容です。詳しくは「多胎児の権利の宣言とニーズの声明」に書かれています。
(和訳は日本多胎支援協会のWebサイト上の「役立つ情報」にあります。)
★ COMBO「ふたご・多胎児の権利の宣言とニーズの声明」
ICOMBOの目標(メルマガ2015/01/06でもご紹介済みです )
1.「多胎児の権利の宣言とニーズの声明」の内容を推進する。
2.多胎家庭や多胎支援組織が、問題解決のための様々な資源や強みを共有し発展できるための環境を提供する。
3.多胎児の成長・発達、ケア・養育、教育に関する計画を推進し実施する。
4.ICOMBOの研究プロジェクトの情報と成果を、特にTwin Research Human Genetics誌(国際双生児研究会議ISTSの公式な研究誌)を通して広めていく。
5.世界中の多胎組織がICOMBOの会員になるように推進していく。
ICOMBOの歴史
ICOMBOは、もともとはCOMBOとして、1980年にエルサレムで開催された国際双生児研究会議(ISTS)で組織されました。1980から 1986年にかけてニュースレター、各組織の持つ資源、研究を通じて、メンバー組織間の結びつきが強まっていきました。1992年、東京での国際双生児会議において「多胎児の権利の宣言とニーズの声明」 を完成させるためにメンバーが共同作業を行いました。この宣言は公式には1995年、アメリカのヴァージニア州リッチモンドで開催された国際双生児研究会議の場でCOMBOメンバーの間で採択されました。1998年のヘルシンキでの国際双生児会議においてCOMBOは新たな組織管理体制を採択するとともに、ISTSのワーキンググループとして承認されます。2010年のソウルでの国際双生児研究会議において COMBOは正式に名称をICOMBOと変更します。それは、国際的な視野で活動していることをより鮮明に打ち出すためです。JAMBAは2010年に成立し、この年にICOMBOの会員となります。
理事について
ICOMBOの理事は3年に一度改選されます。2012~2014年の担当者に任期が終了し、2015年度から新体制になっています。代表、副代表、編集担当理事、研究担当理事、会員担当理事など合計10人程度の理事がいます。
ボランティア募集中
ICOMBOでは理事会をアシストする献身的なボランティアを探しています。現状では、目標達成のために活動するには、マンパワーと財政面での限界があります。世界中の組織をうまい具合に結び付け、支援する活動をするには、どうしてもボランティアが必要です。理想的には、以下のような人たちを求めています。①全国レベル、あるいは国際レベルでのボランティア経験がある人(特に、多胎組織での経験があればより好ましいです)。②多胎児に関する問題に情熱を傾けられる人。③一人で仕事をすることに苦痛を感じない人(そして必要な時には助言を求めることが出来る人)。④必要な時には指導力を発揮できる人。
国際的な場面で活動をすることは大変ですが、多胎に関して同じ様な情熱を持っており、状況を少しでも改善したいと望む人々と出会う興奮のある機会です。インターネット環境とメールのやり取りができることが必須です。
ICOMBO会員情報
ICOMBOの会員は各国の全国組織が中心ですが、その他多胎に関連する組織、多胎育児支援に専念している多胎児の親や専門職にも開かれています。現在の会員は以下の通りです。会員の大半が先進国の全国組織です。アジアの会員は日本が唯一です。
なお、多くの組織の略語がMBAで終わっているのは、Multiple Births Association(多胎支援協会)のためです。日本多胎支援協会(JAMBA)もこうした流れを意識した命名です。海外の組織については今後のメルマガでご紹介します。
<北アメリカ地区>
カナダ (カナダ多胎支援協会:MBC)
アメリカ (①アメリカ多胎支援協会:MOA、②多胎研究センター、③多胎児を亡くした親の国際組織:CLIMB)<ヨーロッパ地区>
ノルウェー (ノルウェーふたご親クラブ)
ファインランド (フィンランド多胎支援協会:FMBA)
スウェーデン (スウェーデンふたご協会)
デンマーク (ノルディックふたごネット)
ドイツ (ABCクラブ)
オランダ (ふたご協会)
イギリス (①多胎支援協会:MBA、②ふたご・多胎協会:TAMBA)
フランス (ふたご・多胎協会)
チェコ共和国 (双子・多胎クラブ)<アジア・太平洋地区>
日 本 (①ツインマザースクラブ:JATM、②日本多胎支援協会:JAMBA)
オーストラリア (①オーストラリア多胎支援協会:AMBA、②マルチネット)
ニュージーランド (ニュージーランド多胎支援協会:NZMBA)
おわりに
国際組織と言っても、大きな経済的支援を受けているわけではなく、現状はJAMBAと同じで、熱心なボランティアの力で成り立つ部分が大きいのです。組織の成り立ちの経緯として多胎の研究者集団(国際双生児研究会議ISTS)との関係が強いと言えます。そして、ICOMBO自体も研究に力を入れています。それは多胎育児の現状をテーマとした研究が少ないためだとも言えます。最近では「産後うつ」についてのインターネット調査を実施しています(結果はいずれご紹介します)。国内における異分野の活動を知るとともに、海外での多胎支援の動向を知ることも今後のJAMBAの活動の参考になることでしょう。
by 大木秀一