ちょっと前まで、一卵性双生児をDNA鑑定で識別することは出来ませんでした。現場にDNAが残されていた事件でも、双子のどちらなのかが分からないため、犯人を特定できなかったこともあります(2009年にドイツとマレーシアで別々に発生した事例です)。しかし最近は、技術的には二人を識別できるようになりました(但し、かなりの手間暇がかかります)。DNAのメチル化(methylation)に基づく性質の相違や、個人差が生じやすいミトコンドリアDNAの変異率(mutation rates)を利用して調べます(どちらも2015年に論文報告有り)。
“Differentiating between monozygotic twins through next-generation mitochondrial genome sequencing.”
“Differentiating between monozygotic twins through DNA methylation-specific high-resolution melt curve analysis.”
ただし、どちらの識別法も試料が少なかったり、メチル化や変異が少ない若年期の場合は識別できないことも生じます。逆に言えば、これほど鑑定技術が進歩した現在であっても、一卵性双生児は科学的に「そっくり」なのです。この「そっくり」さを活用し、同じく「同年齢のきょうだい」が同じ家庭で過ごしている二卵性双生児と統計的な対比を行うことにより、遺伝と環境の影響について調査する手法が双生児統制法となります。一卵性双生児と二卵性双生児にご協力を頂く双生児統制法を用いた研究は、遺伝と環境に関する様々な問題について非常に貴重な知見を社会に提供し、社会厚生の向上につながっています。
ICOMBO(国際多胎支援組織協議会)は、2018年の国際多胎児啓発週間(IMBA2018)のテーマを”Research with Multiples Benefits Everyone”(多胎児に関連する研究は、公共の福祉に寄与します)と設定し、双生児研究の意義を広く知って頂けるように努めています。
多胎関係者の皆さま、今後とも研究・調査活動にどうぞご協力をお願い致します。
JAMBA理事