一卵性双生児は遺伝?偶然?

一般的には、一卵性双生児は遺伝の結果ではありません。世界的に見ておおよそ1000分娩中の4組が一卵性であり、民族・人種等での大きな違いはありません。ここをご覧になっている方にとっては、今更な話かと思います。(一卵性出生率が特に多い国と特に少ない国を取り出せば、それなりの差はあります。しかしこれは分布の問題なので、統計的に有意な差は無いと考えられています。)

しかし正確に言えば、「完全に偶然では無く、例外的に遺伝の影響もある」家系の存在も指摘されています。実際に、「(おそらく)遺伝の結果として一卵性双生児が数世代にわたって高頻度で産まれてくる家系」も報告されています。

この問題でややこしい点は、「一卵性双生児が偶然に連続して生まれてきた家庭」と「遺伝要因で一卵性双生児が連続して生まれてきた家庭」の双方が共に存在し、両者が混在している所です。しかも両者の違いは、学術調査でも「推測」することしか出来ません。

ではまず、偶然に連続して一卵性の子どもが生まれてくる家庭を考えましょう。一卵性双生児の子どもが一卵性双生児となる可能性は、1人につき約0.4%です。でも双子ですから、二人のそれぞれに可能性があります。二人のどちらかに一卵性の子どもが出来れば、「一卵性双生児に一卵性の子ども」いることになります。つまり、その確率は0.4%より高い(0.798…%)のです。また親・祖父・曾祖父と家系をさか登っていくと、どんどん祖先の人数が増えていきます。人数が増える分だけ、遠い祖先や親戚に一卵性双生児がいる可能性は高くなります。直系だけではなく更に傍系の縁者まで含めると、偶然に何世代かに連続して一卵性双生児が生まれてくる家庭は、結構な数で存在することになります。

一方、遺伝的要因で一卵性双生児の出生頻度が高い家系は、通常で考えられているよりは多いかも知れないとの指摘はありますが(familial monozygotic twinning is more common than suggested by the literature )、存在したとしても圧倒的に少数です。さらに遺伝の影響が考えられる家庭であったとしても、「必ず」一卵性となるという訳ではありません。一卵性の出生頻度が少し上昇するだけです。遺伝の可能性が指摘されている学術報告例も、「一卵性の親から生まれてきた何人もの子どもの中に、一卵性の子どもが含まれている」という事例です。またこの出生率の上昇が、一卵性双生児の全体での出生率を左右するほど影響を与えることはありません。ごく限られた地域(ブラジルの一地域など)では、遺伝要因が出生率に影響を与えている可能性も検討されてはいます。でも、やはり世界中を探しても、ごく例外的な存在だろうと考えられています。

つまり一卵性双生児が遺伝要因で連続して誕生する家系も、世の中には存在している可能性が高いです。しかし一般的には、ほぼ偶然の結果と考えても差し支えありません。遺伝なのか偶然なのか?尋ねられた経験がある方も多いかと存じます。そんな時は、「どっちも有り得るみたいですが、うちがどちらなのかは分かりません。」と答えておくと、それで納得して頂けるのではないかと思います。

JAMBA理事

<参考文献>
Four-Generation Pedigree of Monozygotic Female Twins Reveals Genetic Factors in Twinning Process by Whole-Genome Sequencing.
The genetics of twinning: From splitting eggs to breaking paradigms.
Non-identical monozygotic twins, intermediate twin types, zygosity testing, and the non-random nature of monozygotic twinning: a review.
Familial monozygotic twinning: A report of seven pedigrees.
Familial incidence of twinning.
Familial twinning and fertility in Dutch mothers of twins.
Heredity of twinning in families of monozygotic twins. (Article in Italia)

追加
Does Identical Twinning Run in Families?“(The Washington State Twin Registry)